蓮佛研(偽連載)コラム第一回「清浄歓喜団は団体ではない」

京都は東大路を北行し、八坂神社にさしかかる手前に、毎度気になる幟旗が有った。

「清浄歓喜団 調進所」

龜屋清永さんが掲げたものとは直ぐに合点はいったが、

「清浄歓喜団ッテナンダ?」
「ナニカノ団体ナノデアロウカ」

と思う間に、バスはすんなり通り過ぎてしまうので、視界から遠ざかると共に、そんな疑問もすっかり霧散してしまっていた。

ここのところ、神道と仏教の邂逅に「魔改造」な魅力を覚え、ついぞ読むことは無かろうと高を括っていた『渓嵐拾葉集』に手を出すにまで至ってしまった。その中に「聖天祕決私苗」として、

一。此ノ天ニ酒・蘿・團ノ三種ヲ供ス事
示シテ云ク。酒ニハ消毒ノ用ガ有ルガ故ニ、此ノ天ノ因位ニ之ヲ服セシム。又、酒ニハ即チ和融ノ用ガ有ルガ故ニ、之ニ供ヘ奉ル。又、之ヲ服スレバ、五體身分ニ智慧ノ光ヲ遍クシ、法界ニ遍クスル事ヲ標スル也。次ニ團トハ、此ノ大臣の志ヲ后ニ通ジ奉ル時、此ノ團ノ中ニ艶書を入れて后ニ奉リ、之ニ依リテ常に之ヲ好ミ、之ヲ得ル時ニハ歡喜シ給フ。故ニ歡喜團ト號スル也。因位ノ好物ナルガ故ニ、之ヲ供スル時ニハ必ズヤ悉地ハ成就スル也。故ニ大事行法ノ時ハ所念ノ事ヲ書キ、必ズ此ノ團ノ中ニ入レル也。深ク之ヲ思フベシ。

という、聖天様の供物を解説した箇所に出くわした。なるほど聖天様は「酒」「大根」「団子」が好きなのだな、なかなかに奇妙な食い合わせだと思ったところ、その「団子」が「歡喜團」だと有るではないか。

「団ハ団体ヂャナイ、団子ダッタ」

と、やっとのことで疑問が疑問らしく氷解した。

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当の龜屋清永さんのページを見てみると、既に次のような紹介が記されていた。

略してお団と言い、遠く奈良時代、遣唐使により我国に伝えられた唐菓子の一種で、数多い京菓子の中で、千年の歴史を昔の姿そのまま、今なお保存されているものの一つであります。
唐菓子とは「からくだもの」と呼ばれ、仏教と共に我国へ伝わり、天台宗、真言宗などの密教のお供えもので、当時は、とても一般庶民は口にすることは出来ず、貴族のみに与えられたものであります。
七種の香を入れて包み、そのほのかな神秘な香は仏教で言う「清め」の意であり、八つの結びは八葉の蓮華をあらわし、形は金袋になぞらえ、たぎった上質の胡麻油で、揚げてあります。
伝来の当時は中身は栗、柿、あんず等の木の実を、かんぞう、あまづら等の薬草で味付けしたらしく、小豆餡を用いるようになつたのは徳川中期の後であります。
弊店はその秘法を比叡山の阿闍梨(あじゃり)より習つたと伝えられ、月の一日、十五日を中心に調製します。勿論精進潔斎の上調進することは昔も今も変わりはございません。

なるほど、「清浄歓喜団」は伝統的な上に、更に宗教的な菓子なのだとまでは分かった。しかし、物が物だけに、実際に食べてみないことには始まらない筈だ。

龜屋清永さんに曰く「お味は、こしあんに「清め」の意味を持つ7種類のお香を練り込み米粉、小麦粉で作りました生地を金袋型に包み純正の胡麻油で二十分、揚げて作ったお菓子でございます。」

確かに間違いない。なにしろ今も、塗香のような香りで口の中がいっぱいだ。

(研究員・遠藤純一郎)

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